
7月、GoogleのAdWordsコミュニティ内にて、TrueView動画広告の仕様変更が発表されました。
今回の変更ポイントは「クリッカブルエリアの変更」と「課金対象イベントの変更」の2点。これらは広告主にとってどのような意味を持つのでしょうか? 機能面の詳細とともに、マーケターとして理解しておくべきポイントや対策を解説します。
2014年にオプトが実施した調査 によると、動画広告に対する広告主のニーズとして、「認知施策」「コンバージョン獲得」「指名検索数増加施策」が上位に挙げられています。このことから近年、広告主が動画広告を展開する目的が多様化していることがうかがえます。
Googleも、本記事でご紹介する仕様変更の発表に際し、「TrueViewインストリーム動画広告は、動画視聴のみならず、アプリダウンロードや外部サイトへの誘導にも活用されるように」なったことをその背景として述べています。すなわち今回の仕様変更は、広告主のニーズの多様化を受け、目的に応じた最適な動画広告運用を可能にするための取り組みの一環と捉えることができます。
それでは、「クリッカブルエリアの変更」と「課金対象イベントの変更」という2つの変更点について詳細を解説していきます。
変更点1. デスクトップ動画プレイヤーでのクリッカブルエリア変更
以前(下図左)は画面全体がクリッカブルだったため、視聴ユーザーがオーガニック再生と同様に一時停止しようとして画面をクリックすることでランディングページに遷移されるケースがありました。しかし今回のリニューアルにより、特定のエリアのみがクリッカブル領域となり(下図右)、視聴ユーザーが意図せずランディングページに誘導されることを極力防ぐことができます。
この変更により、関心の低いユーザーによる誤クリックが減り、「本当にランディングページで情報を見たいユーザー」だけがクリックをすることになるため、広告主は質の高いユーザーの流入が期待できます。またユーザーにとっても意図しないページ遷移の可能性が減ることになり、ユーザーエクスペリエンスの向上につながるでしょう。
なお、この仕様はクロススクリーン対応となっており、モバイルデバイスを含めた全デバイス上で同一体験できるようになるようです。
変更点2. 課金対象イベントの変更
以前の課金対象イベントは「動画を30秒再生するか、30秒未満の動画の場合は最後まで再生した段階で課金」のみでしたが、今回のリニューアルではさらに「動画広告のクリッカブルエリアをクリックした時に課金」が追加されました。
課金ポイントが先に起きた時点で課金され、二重課金はされません。さらに今後、AdWords管理画面においてクリッカブルエリアごとのレポートも表示されるようになると言われており、どのエリアがクリックされやすいかなど、今後の動画広告の運用に役立つデータも新たに収集できるようになるでしょう。
この課金対象イベントの変更は、一見すると課金対象が増えただけで、広告主にとっては不利のように感じるかもしれません。しかしこの変更には「動画広告の品質を正確に判断したい」というGoogleの意図があります。
TrueView動画広告は、「ユーザーが設定する入札価格」と「品質スコア」によって広告配信量などが決定します。以前は「視聴継続時間」をもとに広告の品質スコアを決めており、動画の早い段階で視聴ユーザーが動画をクリックし、外部サイトに移るほど品質スコアが低下し、配信量も減るという仕組みになっていました。しかしこれでは、短時間で視聴ユーザーに「もっと情報が欲しい」と思わせる"訴求力のある動画広告"の評価も低くなってしまうという矛盾が生じてしまいます。そこで今回、広告の品質スコアに「クリックされた回数」という指標も含むこととし、評価軸が増えたことで品質スコアの精度を高めようと考えたのです。
さらに広告へのアノテーションの廃止を予定
今後、動画広告へのアノテーションが廃止されることになっています(時期は未定)。そのため、今からアノテーションを使用したキャンペーンを考えるのは得策ではありません。新しくなったカード機能やCTAオーバーレイをうまく活用しましょう。
広告主やマーケターは何をすべきか
今回の変更は、企業のマーケティング活動にどのような影響を及ぼすのでしょうか。予想し得る今後の展開と、取るべき対策を3つご紹介します。
モバイルデバイスからのアクセス増加
クロススクリーン対応により、モバイル動画広告から自社サイトへの導線が強化され、スマートフォンなどから自社サイトに流入するユーザーが増える可能性があります。そのため、ランディングページのモバイル対応の必要性はますます高まると考えられます。
▽新しくなったモバイルでの課金対象イベント
CVR(コンバージョン率)の向上
動画広告を経由してサイトに訪れるユーザーの質が上がることが期待されるため、その結果としてCVRが向上する可能性があります。そのためには「もっと情報を知りたい」というニーズを持つユーザーを満足させられる充実したウェブコンテンツを用意することが求められます。
動画広告単体、ランディングページ単体の企画ではなく、マーケティング施策として包括的にプランニングすることがますます重要となるでしょう。
リーチの増加
動画広告の品質を評価する基準が増えたため、広告主は品質スコアを向上させる対策を取りやすくなりました。品質スコアが上がれば結果として配信量が増えるため、より多くのユーザーにリーチできる可能性が高まります。
品質スコアを向上させるためには、広告目的を明確にし、それに即した動画広告を企画する必要があります。ブランディングなどを目的とした動画であれば、最後まで視聴されるコンテンツで、視聴維持率の向上を図りましょう。一方、サイト誘導やコンバージョン獲得を目的とする場合は、ユーザーの興味を強く喚起し、外部サイトでさらに情報が知りたいと思わせる動画コンテンツ作りが不可欠となります。
ユーザー体験の向上を目的に進化を続けるYouTube
その他にもここ数カ月の間にYouTubeはさまざまな変更を行っています。見た目の面では、プレイヤーが透明になりました。動画の画面が広くなり、ユーザーにとっては動画が視聴しやすくなっています。
また、8月には動画再生が301回で一時的に止まるという現象が解決した旨が発表されました。
https://twitter.com/ytcreators/status/628958720953819136
それまでは再生数が300回を超えた時点で、ボットによる再生をスクリーニングするために、再生数を一時的に301回で止めていました。しかし今回の改良により、リアルタイムでボットチェックが行われるようになり、301回で止まる現象が解消されたそうです。YouTubeクリエイターにとって再生数は収益に直結するため、この改善はクリエイターにとっては朗報と言えます。
さらに先日、他社のDSPからのYouTubeの動画広告の買い付けが今年中にできなくなるという発表もありました。マーケターは来年以降、YouTubeで動画広告を展開するには、Google社からの直接販売の他、Google AdwordsやGoogleの自社DSPであるBid Managerから直接出稿する必要があることも頭に入れておきましょう。
このようにGoogleは、「視聴ユーザー」「広告主」「クリエイター」というすべてのYouTubeユーザーの体験を向上させるべく、アップデートを繰り返しています。Facebookなども年々その存在感を増していますが、現在の日本における動画マーケティングの中心に位置するのはやはりYouTubeです。動画マーケティングで成功を収めるためには、YouTubeの特性を熟知し、効果的に使いこなすことが絶対条件なのは間違いないでしょう。