
ソーシャルネットワークを活用したマーケティングが盛り上がりを見せる中、若年層に人気の高いInstagramも国内での広告配信の開始を発表。マーケティング施策に活用する企業も今後ますます増えると予想されます。
そこで、動画マーケティングにInstagramをいかに取り入れるべきか、メディアとしての特徴やアメリカでの事例を参考に、そのヒントを探ります。
写真・動画共有SNSであるInstagram(インスタグラム)は、その日のファッションや訪れたカフェの写真を投稿したり、好きなモデルやタレントをフォローしたりと、その「おしゃれ」なイメージから20代を中心に圧倒的な人気を誇っています。
企業のプロモーションにも使われるようになってきたInstagramですが、Shareablee社の調査によれば、1つの投稿に対するエンゲージメントはFacebookの3倍にも上るとのこと。また、FacebookやTwitterなどのSNSとの連動も簡単にできるため、写真や動画の拡散に優れていることも注目すべき点です。
さらに今年広告配信を開始することから、マーケティング施策の選択肢としてその存在感を増しているInstagram。効果的な活用方法を考えてみました。
若年層へのアプローチに効果を発揮
Instagramは2014年12月時点で米国での月間アクティブユーザー数(MAU)が3億人突破しており、TwitterのMAUを超えました。また、2013年時点ではインターネットユーザーのうち17%の利用率でしたが、2014年には26%に増加し、現在でもユーザー数を増やしています。
また、国内の調査からは、Instagramユーザーの年齢層は20代が圧倒的に多く、20代男性は39.10%、20代女性に関しては42.16%にまで上ることが明らかとなっています。
画像参照元:http://lab.appa.pe/2015-02/sns-demographics.html
写真や動画に特化したInstagramのフィード上に表示されるのは、自分がフォローしたユーザーの投稿のみ。Facebookのように、友達が「いいね!」した他人の投稿が表示されることがないため、自分が好きな写真や動画だけを集めてフィードを作っていくことが大きな特徴の一つです。そして、フォローする側もフォローされる側も、自分のライフスタイルや日常をいかに「おしゃれ」に見せ、自己をブランディングしていくか、というのがInstagramに投稿する際のユーザーのマインドだと言えます。
以上のような特徴から、Instagramは流行やおしゃれに敏感な若年層にアプローチしたい広告主にとっては非常に有効なメディアと言えるでしょう。また、自社製品やサービスを「おしゃれなアイテム」「憧れのライフスタイル」としてブランディングしたい企業にとっても魅力的ではないでしょうか。
期待高まる日本でのInstagram広告導入
そんなInstagramが日本でインフィード型の広告表示を開始することを先月発表しました。
これまで日本企業がInstagramをマーケティングに活用する際は、一般のユーザーと同じようにアカウントを作成し、写真や動画を投稿する形をとっていました。そのため、企業アカウントをフォローしているロイヤルカスタマー向けのプロモーションが主な使い方でした。
しかし広告表示が始まると、フォローの有無に関わらず、アプローチしたいユーザー層のフィード上に広告を表示できるため、今までは難しかった認知拡大などを目的とした施策も可能となります。
Nielsenがこれまで海外で展開された475のInstagram広告キャンペーンを対象に調査したところ、インフィード上に表示された広告の想起率が、ほかのオンライン広告の平均よりも2.6倍も高かったことを発表しており、その効果の高さは折り紙付きです。
なお、詳しい出稿方法や課金方法などはまだ明らかとなっていないため、今後の発表が待たれます。
いかにユーザーの興味を引き、気に入られるか?
それでは、Instagramの広告にはどのような特徴があるか見ていきましょう。
●ターゲティング
基本的な属性だけでなく、Instagramでのフォロー先や、Facebook上での行動などをもとにターゲティングを行うことができます。さらに現在、Facebookと協力し、ターゲティング機能の強化や広告出稿画面の改善を図っていると伝えられています。(参考 )
Instagramはユーザー体験を尊重する方針をとっており、興味関心を持ちやすいユーザーに適切な広告を配信するためにも、ターゲティングについては細かな設定ができるようになることが予想されます。これは広告主にとっても魅力的な機能と言えるでしょう。
●非表示設定
ユーザーがフィード上に表示された広告を残したくないと思った場合、その広告の下にあるボタンから「非表示にする」を選択することができます。
広告主としては非表示にされないよう、Instagramユーザーの嗜好や独自のカルチャーを捉え、フィード上で違和感のない“ネイティブ”な広告を追求する必要がありそうです。
●アクションボタン
広告を見たユーザーがダイレクトにアクションを起こせるよう、「SHOP NOW(今すぐ購入)」「INSTALL NOW(<アプリなどを>今すぐインストール)」「SIGN UP(登録する)」「LEAN MORE(さらに詳しく)」などのアクションボタンが現在、試験的に導入されています。このアクションボタン設置により、広告主は認知拡大やLPへの誘導、商品売上などの具体的な目標までユーザーに行動を促すことが可能になるとしています。
画像参照元:http://blog.business.instagram.com/post/120537653811/the-next-steps-for-ads-on-instagram-new-formats
●動画広告
Instagramに投稿できる動画は15秒まで。写真と同様、動画も正方形のフレームが適用されるため、YouTubeなどの既存の長方形の動画を投稿する際は、左右がトリミングされることを考慮する必要があります。
また、フィード上に表示された動画コンテンツは音声なしで自動再生されます。Instagramの動画広告は、写真が並ぶフィード上でユーザーの目を引きやすいというメリットがありますが、自動再生される最初の数秒で、音声がなくても興味を引く動画企画が求められるでしょう。
ファッションブランドGAPによる動画広告の成功事例
米GAPは今年の春の新コレクション発表に合わせ、Instagram限定の15秒のミニドラマシリーズ「Spring Weird」を広告として公開しました。変わりやすい天気や偶然の出会いなど、春に起こる不思議な瞬間をコミカルかつスタイリッシュに描いた12本の動画広告シリーズは、1本1本単体でも楽しめつつ、全体で一つのラブストーリーとして成り立っています。
GAPの担当者は「Instagramは、今起こっていることや、ユーザーの心が動いたものをビジュアルで表現し、シェアする場だと考えています。この特徴はファッションと非常に相性が良いのですが、不思議なハプニングの1コマを切り取るという今回の動画広告企画にもぴったりでした」と述べています。
このキャンペーンへの反応として、視聴者が次の展開を予想するコメントを残したり、商品をどこで買えるか問い合わせがあったり、ストーリーや登場人物のファンができたりと、それまでにGAPが掲載していた動画コンテンツよりも高いエンゲージメントにつながったそうです。
動画再生前のカバーフレーム(サムネイル)に動画タイトルをつけて視聴者の関心を引く工夫や、男性がドアをノックするとInstagramのハートマークが出てくるという遊び心のある演出など、メディアの特徴やユーザーの嗜好を意識したクリエイティブも奏功したと考えられます。
大きな可能性を秘めるInstagram動画広告
Instagramユーザーにとって新しい体験となる広告。「企業のセンスが問われると思います。(中略)広告も楽しみになるような質の高いものを期待しています!」などのユーザーコメントがあるように、クオリティに対する期待値は高いようです。(参考 )
メディア自体に対するユーザーのエンゲージメントが非常に高いInstagramだからこそ、そのトーン&マナーやユーザーの嗜好を的確に捉えた動画広告を目指すことが不可欠です。その代わり、GAPの事例のようにユーザーに好意的に受け入れられれば、マーケティングの大きな成功へとつながることでしょう。Instagramだからこそできる動画広告企画で、他社と差を付けてみてはいかがでしょうか。
[参考]
Instagram for Business : http://blog.business.instagram.com/post/114613614456/springisweird
Instagram Marketing Is Quickly Catching Up to Facebook | Adweek :
http://www.adweek.com/news/technology/instagram-marketing-quickly-catching-facebook-159249