
動画マーケティング戦略の成功を機にその名を世界に広めた、ウェアラブルカメラメーカーのGoPro。2年間で売上を約4倍に増やし上場を果たしたGoProの急成長の裏には、世界中からお手本にしたいと称される、巧みな動画マーケティング戦略がありました。
動画数1500万本超、総再生回数が4億5000万回超、200万人のユーザーが登録している同社のYouTubeチャンネル。ユーザーを魅了して離さない成功の理由を探ります。
衣服やスポーツ用品などに装着して動画を撮影できるウェアラブルカメラメーカー「GoPro」は、2002年に設立されたベンチャー企業です。2011年に2億3420万ドルだった売上を、2013年には約9億8570万ドルにまで急成長させ、今年5月に上場しました。
急成長を遂げた同社のマーケティング戦略の中で、YouTubeは欠かせない存在だったようです。YouTubeが公開している、YouTubeマーケティング成功事例集「YouTube Success Stories」に掲載されているインタビュー動画の中で、同社マーケティングディレクターのLee Topar氏は「(YouTubeでの)再生数が増えるにつれて、注文数がどんどん増えていくのを実感した」とコメントしています。
製品だけに着目すると、GoProのデバイス自体は数十年前からあるCCDカメラと大きな違いはありません。ただ、数ある同業他社の中で圧倒的な地位を確立することができた勝因に、“販促ツールを越えたYouTubeの活用法”と、“用途の限定”という2つがありました。
カメラメーカーではなく、新しい“メディア”企業を目指すGoPro
“販促ツール”としてではないYouTube活用がGoProの爆発的な成長を後押ししたきっかけとなりました。これまでGoProのマーケティング戦略はほとんど表に出てきませんでしたが、上場を機に公開された上場申請書から、その戦略の一端が明らかになりました。
GoProの申請書には、次のような記載がありました。
これまでの当社の売上の大半は、カメラやアクセサリーの売上だった。当社のカメラはこれから今以上に普及し、そこから魅力的なコンテンツが次々に生まれると期待している。
そうなればGoProは、製品が生み出すコンテンツを通して、みんなをワクワクさせられる今までにない“メディア企業”になるだろう
GoProは他のYouTubeマーケティング成功企業のように、YouTubeというプラットフォームで製品自体のPRを行い、そこから直接コンバージョンや売上につなげるやり方とは一線を画しています。
それまで収益の柱となる “製品”をいかにして売るかを考え、そこに注力してきたGoProは、製品を通して生み出される“コンテンツ”と、“コンテンツが人々にもたらす価値”に目を向け始めたのです。コンテンツを広めるための“流通経路”としてYouTube利用し、自らが良質なコンテンツを生み出し続ける“メディア企業になる”ことを目指していると言います。
GoProしか発信できないコンテンツを、YouTubeやSNSなどの“流通経路”を介して世の中に流すことで、カメラメーカーではなく“メディア企業”になる――。動画というコミュニケーションツールの活用が、同業他社や他の企業との大きな違いを生み、GoProを“唯一無二”の企業へと後押ししました。
“メディア企業”としてのGoProの実力
では現在“メディア企業”として、GoProコンテンツに集まる注目はどれほどのものなのか、申請書には次のように記されていました。
何千人というGoPro利用者が、写真・動画を毎日シェアしている。そうしたコンテンツが認知されて興味を持ってくれる人が増えるほど、GoProや製品に対する認知・興味も高まっていく。
2013年にYouTubeにアップロードされた動画のうち、GoProで撮影された動画の再生時間を集計すると、約2.8年分にもなった。
2014年1~3月にも、タイトル・ファイル名・タグ・説明文のどこかに『GoPro』と記載されている動画が1日平均6000本もアップされた。それらの動画が10億回以上再生されて、再生時間は延べ5000万時間以上にもなる
YouTube以外にも、Facebookページには750万人が「いいね!」し、Instagramには200万人、Tiwtterには100万人のフォロワーがいるGoPro。そしてYouTube上での再生回数は4億5000万回を超え、200万人以上のユーザーにチャンネル登録されています。
現在はコンテンツそのものを直接収益化させていませんが、今後はコンテンツを活用し、広告やスポンサー収入から新たな売上を生み出す計画も進められているそうです。
このように世界中のGoProファンが、GoProが生み出すコンテンツを心待ちにし、また一緒になってそこに参加していることが伺えます。