
2013年7月から四半期ごとに定期公開されている、米国内でのYouTubeの最新の統計情報やトレンドが集約されたレポート『YouTube Insights』。
今回の「第2号」では、YouTubeマーケティングを実践する上で欠かすことの出来ない「ファン」をテーマに、米国の成功事例から、「ブランドとファンの結びつきがもたらす影響」や、「ファンとの関係性の構築方法」が報告されています。視聴者とは異なる「ファン」の存在とは一体?
国内でもますますニーズが高まるYouTube広告。そんな中movieTIMESでは、YouTube/Googleが定期公開している、米国でのYouTubeマーケティングの統計情報やトレンドが
※ 先日ご紹介した『YouTube Insights 第1号』では、YouTubeの視聴者層、人気チャンネルの動向、表現方法、効果をテーマに「YouTubeマーケティングのための基本情報」をお届けしました。
今回ご紹介する『YouTube Insights 第2号』では、YouTubeマーケティングを実践する上で、欠かすことが出来ない「ファン(ユーザー)との関係性」にフォーカスし、下記の4つのテーマに基づいて報告がされています。
- 視聴者層
- キャンペーン事例
- 成功事例から学ぶ動画コンテンツの表現方法
- 効果
米国内でYouTubeマーケティングを成功させている企業に見られる共通点から、「ファンとの関係性の構築」が重要であることがわかりました。レポートではいくつかの成功事例や統計情報と共に、最も効果的に、ファンと強力な関係性を築くためのノウハウを伝えています。
1.視聴者層:ファンとは?
「視聴者」ではなく、「ファン」との関係性を築く
YouTubeユーザーには「視聴者」と「ファン」という大きく異なる2つの存在があります。視聴者は偶発的にブランドと出会い情報を消費する一方で、「ファン」は必然的にブランドと出会い、情報を共有し、発言し、新しい価値を創り出します。そして何より「ファン」はブランド(または、プロモーション)を形成する存在です。
YouTubeにおけるプロモーションは、ブランドがファンのために提供しているものではなく、ファンによって創られていると言っても過言ではありません。
ファンは自らがブランドの広告塔になっている。
・YouTubeユーザーの68%が、YouTubeは創造性を奨励する場であると回答。
・YouTubeユーザー4人のうち3人が、「好きなブランドがあると、そのブランドについて、つい周りの人に話してしまう」と回答。
YouTubeメインユーザー層「ジェネレーションC」
「ジェネレーションC」と呼ばれる世代がYouTubeの中心的な存在として認識されている。彼らはクリエイション、キュレーション、コネクション、コミュニティの4つのCを好み「ありとあらゆる時間帯と場所でコンテンツを消費する世代」と定義されている。(参考:『YouTube Insights 第1号』1.視聴者層)
・ジェネレーションCの76%が、動画を探す時は最初にYouTubeを訪れると回答。
・ジェネレーションCは他の世代と比べて1.6倍の人が「YouTubeは自分の楽しみの1つである」と回答。
・ジェネレーションCは他の世代と比べて2倍の人が「広告を視聴する時、テレビCMよりYouTubeの方を好む」と回答。
・ジェネレーションCは他の世代と比べて2倍の人が「視聴したいと思う広告は、視聴選択(スキッパブル)できる広告だけである」と回答。
・ジェネレーションCの2人に1人が、「自分の信条に合ったブランドの商品を購入する」と回答。
・ジェネレーションCの61%が、YouTubeで商品やサービスの動画広告を視聴した後に、何らかの行動を起こしたことがある。
(ジェネレーションCとそれ以外の世代との比較調査結果から)
テレビCMなどの視聴者とは大きく異なり、「ジェネレーションC」を筆頭としたYouTubeの視聴者からは、ブランドの広告に対する能動的な姿勢を見て取ることが出来ます。
なので彼かを単なる視聴者に留めず、「ファン」となって共にキャンペーンを形成していってもらえるようにすることが重要なのではないでしょうか。
2.ファンを獲得するキャンペーンとは?
ファンを魅了する。ファンと対話する。
では、YouTube内でファンはどのようにして生まれるのでしょうか。YouTubeの最大の特徴であるユーザーからの”あらゆる発信”(コメント・動画・ソーシャルシェア)を喚起し、ファンとの関係性を築くことでキャンペーンを成功させた、米国企業の広告キャンペーンをご紹介します。
<事例>VICE:トレンドや動向を見極めた、ユーザーを魅了するコンテンツ。
世界中で厳選された若者向けコンテンツを提供するグローバルメディアVICEは、人々を夢中にさせるジャーナリズムや啓発的なドキュメンタリーなど、従来のメディアが取り扱わないコンテンツにこだわって情報を配信するデジタルメディア。
今や400万人以上の登録者を持つ、有名なYouTubeチャンネルの1つとなったVICEだが、その成長の過程には、ファンを確実に形成していく、計画的な戦略があった。
1.“起爆剤”で一気に、ユーザーからファンへ。
最初の契機となったのは、従来のメディアではあまり取り扱われない「自殺」と「ドラッグ」という2つのテーマを扱った動画*を配信したことだった。動画はみるみるうちに話題となり、reddit.com(話題のニュースを扱う人気ソーシャルニュースサイト)上で取り上げられ、アップロード後2日で、14万回の再生を記録。
2つの衝撃的な動画を起爆剤に『VICE』の認知と、メディアの今後に期待を寄せるユーザーを獲得した。たった2つの動画がユーザーの心をつかみ、VICEが今後配信するコンテンツに期待する声が急増。
そして、メディアにとって最大の目的である継続的な訪問が見込めるユーザー(=ファン)の獲得に成功した。またYouTubeだけに留まらず、他メディアへの積極的なコンテンツの埋め込みも実施。
*Suicide Forest in Japan(日本の自殺の森)
*The World’s Scariest Drug(世界で最も怖い薬)
3.トレンドに敏感なユーザーの「今」に合わせたコンテンツを配信し、求められるメディアに。
VICEは、米国で銃規制の討論が激化し、関連する検索語が話題になっている2013年3月に、銃をテーマにした動画*を公開。注目が集まるテーマを注目が高まっている瞬間に取り扱うことで、ユーザーの目に触れやすくなるのはもちろんのこと、メディアの主要読者層となり得るトレンドに敏感なユーザーに対し、「期待するコンテンツを提供し続けるメディア」という印象付けを行うことが出来たたため、その後もファンに支持され続けるメディアとなった。
参考:http://www.google.com/think/case-studies/vice-youtube-success-sustained-viewership.html
<事例>ING DIRECT:既存概念を覆す、ユーザー参加型コンテスト。
カナダのオンライン銀行ING Direct Canadaは、自社のプロモーションを通して、一般的にお金の話をするのが憚られるカナダ人の意識を変え、貯金について楽しく会話ができる機会を提供することを目的に、YouTubeを活用した動画コンテストを実施。
ユーザーが動画を投稿しその後投票するという流れで行われたキャンペーンは、有名なバンドと共同で動画を制作したり、YouTubeのマストヘッド広告(YouTube TOP画面最上部)を使い“マドンナ”のカバーを歌いながら貯金をする動画を投稿するなど、それまで避けられていた“お金”というテーマを、ユーモアやクリエイティブを交えて扱ったことで、ユーザーの積極的な参加が促された。
キャンペーンは全体で700万回のインプレッション数と16万6千回のエンゲージメント数を達成し、ブランドイメージの向上と認知を得た。
参考:http://www.google.ca/think/case-studies/ing-canada-2013.html
あらゆるマーケティング手法の中で、とりわけ“ユーザー”との距離が近く、その熱を直に感じることができるYouTube。当然、YouTubeマーケティングを成功させる鍵を握っているのもユーザーです。今回は「ブランドとファン」をテーマに、ブランドを支持し、積極的にキャンペーンに参加し、自らも情報を発信する“ファン”を獲得することが重要なファクターになっていることがわかりました。
次回は、いよいよファンとの関係性を築くコツや、キャンペーンの成果成功事例から、「ファンの心をつかむ具体的なコンテンツの表現方法」や「効果を期待できる戦略」など、実践に役立つ情報をお届けします。
※後編は2月24日に公開予定です。
[参考]
YouTube Insights Issue Two October 2013
http://ssl.gstatic.com/think/docs/youtube-insights-stats-data-trends-vol2_research-studies.pdf