
大手ビールメーカーのハイネケンは、「open your world(あなたの世界を広げよう)」というブランドイメージを世界に向けて発信するために、“ユーザーが見たくなる”動画を使ったキャンペーンを世界中で積極的に行っています。
今回は、その中でもユニークなキャンペーンをいくつかご紹介したいと思います。
自分の歌声がタイムズ・スクエアに流れるドッキリプロモーション
キャンペーン概要
カラオケルームに入り、クリスマスソングを選んで歌い出すと・・・いきなり部屋の壁が開き、ハイネケンのTVスタジオに早変わりするという、ドッキリプロモーション“Carol Karaoke”。
「このまま歌い続けますか?」という問いにYESと答えると、その歌声がタイムズ・スクエアやNBAの試合中に流れるという驚きのキャンペーンです。
▼一生に一度の歌手デビュー!?
今まで経験したことがない「多くの人々の前に自分の歌声が流れる」ことで”自分の世界を広げよう”というメッセージを体現しています。YouTubeで400万回以上も再生されている(2014年2月現在)、大成功したキャンペーンです。
知らない地へ連れていかれ、強制的に冒険!“Dropped”
キャンペーン概要
参加者に目隠しをして、秘境や砂漠など、世界のどこかに放り込むという、冒険シリーズ“Dropped”。
今までにシリーズ5作、計6名がこのキャンペーンに参加しています。知らない地で途方にくれたり、奮闘する参加者の様子をビデオカメラで撮影し、YouTubeにて定期的に配信していました。
▼破天荒な冒険ストーリー総集編!
知らない地に落とされ(Dropped)、自らで見知らぬ地を開拓をしていく。まさに自身の世界をひろげざるをえない企画です。
ジェスチャーで操作するインタラクティブ映像でハイネケンの140年をお祝い!
キャンペーン概要
台北市にて行われた、ハイネケンの発売140周年を祝うインタラクティブ・イベント“Heineken Pioneering Bar”。
会場には、ジェスチャーでパソコンを操作できる“リープモーション技術”を駆使した、全面3Dプロジェクションマッピングで覆われたブースが登場しました。参加者は、ハイネケンのビールに必要不可欠な5つの要素を探し出していくストーリーを体感。見事成功すると、リアルタイムでFacebook上に“トラベル完了”というメッセージが投稿されるという、インタラクティブな企画です。さらに、最後には参加者の名前が印字されたオリジナルビールがプレゼントされるという嬉しい特典付き!
▼いざ、タイムトラベルへ出発!
台湾では「リープモーション」テクノロジーをつかった初めてのキャンペーンだったそう。当日は長蛇の列ができ、ブランドの世界観を伝えることに成功したイベントとして話題となりました。台湾に住む人々は初めての経験に、”新しい世界”を見たことでしょう。
AR×街頭ビジョンでハイネケンのTVキャラクターと遊べる!
キャンペーン概要
台湾の駅前広場で行われた、ARでTVキャラクターを出現させるプロモーション。ハイネケンのロゴでおなじみの星マークが、街頭ビジョン前の地面に出現。その上に立つと、ビジョンの中に自分の姿と、そこには実際は存在していないハイネケンのTVキャラクターが映るというもの。
見事なカンフーを披露するキャラクターや、美しい女性キャラクターなど、複数のキャラクターが出現。参加している人も、周囲で見ている人も楽しめるキャンペーンです。
▼戦って、躍って。駅前広場がステージに早変わり。
AR(拡張現実)によって、そこに存在しないはずのものを登場させ”世界を広げている”本キャンペーン。見ている人も楽しそうです。
ファン獲得に成功した理由は、選ばれる動画へのこだわり
このように、動画を用いた様々なプロモーションを行っているハイネケン。同社の動画の取り組みは、以前、movieTIMESでもレポートした、Googleが実施した国内イベント「YouTubePulse」でも、ハイネケンのプロモーション“Departure Roulette”の動画を紹介しました。この動画は4日間で140万回の再生回数を記録するなど、非常に多くの注目を集め、プロモーションとして大成功を収めています。
この成功の要因としては、単純に「見ていて楽しい」という要素も少なからずあると思いますが、ここで紹介した4つの事例や“Departure Roulette”の事例に共通しているのは、動画の中で「人」を巻き込んでいること。
動画でただ何かを見せたり、動画の中で役者が何かを演じるのではなく、旅行者や通行人などの一般の消費者がハイネケンの仕掛ける企画に参加し、巻き込まれていく様子を動画にしているという点です。また、その仕掛けに巻き込まれている参加者たちもとても楽しそうにその仕掛けにはまっていきます。
この、ハイネケンが仕掛ける数々の面白い企画と、それに楽しそうにはまっていく一般の人たちとの関係性は、動画の視聴者から見ても、企業と消費者の距離の近さを感じさせます。さらに、動画の中で繰り広げられる企業と参加者との「距離の近さ」と、『臨場感』のある『体験的』な展開は、動画を見る者を単なる「視聴者」から、実際にそれを体感的に目撃する「観衆」へと変えてくれます。
YouTubeやFacebookを中心としたソーシャルメディアでの共有が企業のプロモーション活動に大きく影響を与える今、ただ見てくれるだけの「視聴者」ではなく、そこに参加し視聴体験を共有してくれる「観衆」をいかに作るか、動画の中だけではなく動画を見る人をいかに巻き込んでいくかを考えることが、プロモーション成功の大きなカギとなっていくのではないでしょうか。
今後もハイネケンが仕掛ける新しいプロモーションに注目していきたいと思います。