
公開後10日間で150万回以上再生された、とある動画がインターネットユーザーの間で話題になっています。
それはイギリスのホンダ(以下、英ホンダ)が公開した、ディーゼル乗用車「CR-V1.6ディーゼル」のCMです。
錯視を巧みに利用した話題の、この動画。英ホンダは何を伝えようとしたのでしょうか。
思わず最後まで見てしまう、ドキッとするトリック動画
この動画では、人の目の錯覚を利用して平面を立体に見せかける手法(=錯視)を活用して、「えっ!?」と気になるトリックが多数展開されています。
深く彫り込まれた地面にせり出した板の上から、空中を走りだすCR-V。
石のポールに突っ込むCR-V。
小さなテーブルの上に乗る男性とCR-V。
男性とともに宙に浮くCR-V。
他にも、彫像の上を歩く人や、巨大化する人など、60秒の間に7つの仕掛けとタネ明かしがテンポよく展開されていきます。
タネ明かしを見た後でも、仕掛けを確認するためについつい何度も見直してみたくなるほど精巧に作られた動画で、10日間で150万回以上再生されるのも納得です。
ホンダが驚きとともに伝えたかったもの
この動画は日本でも既に様々なインターネットメディアに取り上げられ話題を呼んでいます。きっとこれからも世界中で再生され、視聴回数を伸ばしていくでしょう。それでは、英ホンダはなぜこの動画を作ったのでしょうか?
面白い仕掛けでユーザーの興味を引き、話題を呼んでさらに多くの人に動画を見てもらい、CR-Vというクルマを知ってもらう。それだけではなかったようです。
この動画のタイトルは「Honda Illusions, An Impossible Made Possible(不可能を可能にする)」です。
錯視を利用することで、空中を走ったり石柱をすり抜けたりという一見不可能なことを可能にしたように、CR-Vというクルマは不可能なことを可能にしていくのだというメッセージがこの動画には込められているようです。
さらにもう一つ。
YouTube上でこの動画に添えられた公式説明文には「Honda's new CR-V 1.6 diesel film demonstrates that not everything is what it first seems.(この動画は”すべてが最初に見えた通りではないこと”を証明しています)」と書かれています。
実際に、英ホンダのCR-Vのサイトを覗いてみると、「BIGGER CAR EXPERIENCE, SMALLER CAR ECONOMY」というメッセージとともに、このクルマが、見た目よりパワフルで、かつ、逆に通常のRV車よりも燃費がよく経済的であることがアピールされています。
メーカー別ディーゼル車の比較
この動画には、トリックアートを使った様々な仕掛けを通じて、見た目の先入観ではなく、“本当の機能や価値を知ってほしい”というメッセージも込められていたようです。
認知拡大だけじゃない。バズ動画に必要なこと
ソーシャルメディアの発達とともに、かつて「口コミ」と呼ばれていたものが「バズ」と呼ばれるようになった頃から、多くの企業が「いかに話題を呼ぶか」「いかにバズらせるか」がマーケティング上の大きなテーマの一つになってきました。
動画マーケティングにおいても「バズ動画」という言葉があるように、いかに面白い仕掛けや表現で“注目を浴び”て、”バズらせるか”ということだけが意識されることも増えてきているような気もします。
もちろん、認知を広め、興味を引くためには“話題性”や”バズらせること”は重要な要素ではありますが、今回のこのCR-Vの動画のように、ただ面白いだけでなく、その中にしっかりとメッセージを込めて、それを表現に昇華させることができてこそ、本当に力強くその商品やサービスをユーザーの心に刻む事ができるのではないでしょうか?
[参考]
CR-V 1.6 Diesel 2014 | Our Fuel Efficient SUV | Honda UK
http://www.honda.co.uk/cars/campaigns/2013/cr-vdiesel/