
玩具店の激減によって、事業が縮小していった米国のおもちゃメーカーRokenbok(ロッケンボック)社。
最大のピンチの中、試行錯誤の末にその事業を立て直す手立てとなったのは、YouTubeでの動画マーケティングだったのです。
同社はどのように新しい顧客を見出し、事業縮小のピンチを切り抜けたのでしょうか。
約15年前、国際的企業の幹部であったPaul Eichen氏は、その地位を捨て、組立てブロックとラジコンを組み合わせた高性能知育玩具のRokenbok社を創設しました。
約4年前の販売戦略は至ってシンプル。玩具店の一角で商品紹介をし、顧客の80%を玩具店から、20%をクチコミで獲得するという、インターネットとは縁のない会社だったのです。
変化のきっかけはファンが投稿した動画から
初めはオフラインの販売だけで成り立っていた事業。ところが経済悪化の煽りを受けて、玩具店が激減。同社は顧客と接触し、おもちゃの操作方法を紹介するための新たな手段を探し出さなければなりませんでした。
しかし、“ブロックで創り上げた世界を、ラジコン車が自由自在に走る”という高性能なおもちゃの魅力は、写真では理解されにくく、実際に動かして紹介する必要がありました。
そこでRokenbok社は、クリスマスの時期にショッピングモールでブース型のカウンター店舗を借りたり、メーカー見本市などのイベントに出席したりと、様々な方法を試み始めました。
そんな折、Eichen氏は、ファンが投稿したYouTube動画に目を止めます。
「YouTube動画を投稿しているティーンエイジャーは数多くいますが、その中に、Rokenbokで遊ぶ様子を撮った動画を10年間も投稿していた子どもがいたのです」
彼が気に入っている動画の1つは、2人のRokenbokファンが合体セットを撮影した「Tim and Charlie’s Summer Rokenbok Build」だといいます。
Tim and Charlie’s Summer Rokenbok Build
その後同社は、“Rokenbokers”と呼ばれるRokenbokファンのYouTubeコミュニティへと進出。動画こそ、商品を紹介するだけでなく、楽しみながら、子どもたちに使い方を見せることができる手段であることを悟ったのです。
どんどんと変化してゆく会社の戦略
Rokenbok社は2006年からYouTubeにMr.Rokenbokチャンネルを作り、動画のアップロードを開始しました。このチャンネルは、商品紹介ビデオの他、3分程のストーリー仕立てでその魅力と楽しさをたっぷり伝える“Adventures”シリーズ、その知育効果を家族に伝える“School of ROK”などで構成されています。
Rokenbok Airport Adventure Video
School of ROK
これらの動画は全て社内で制作されています。台本やナレーションを始め、全てのコンテンツの撮影・編集を自社で行っているのです。
素早く制作する場合は、社長自らiPad一台で撮影・編集・掲載まで全てを行うこともあります。下記の動画がその一例です。
X2 Elevators
制作コストはシリーズによって異なりますが、遊んでいる間に撮影したような“制作コストが低め”の動画も、しっかり台本を用意した“制作コストが高めの”動画も、同じような効果を残しているそうです。
さらに、Mr.Rokenbokチャンネル内には、自社で制作した動画だけでなく、ファンの作った動画シリーズである“Customer Videos”も掲載し、ファンとの交流も図っています。
本来の目的を見定めた瞬間
そんなRokenbok社ですが、初めから上手くことが運んでいたわけではありません。
「過去数年間はただMr.Rokenbokチャンネルを構築していたにすぎず、YouTubeが弊社にとって、コミュニケーションの非常に重要な媒体となることに気づいたのは、つい昨年のことです」とEichen氏は語っています。
同社は社内調査を通じ、メカニックな動画を見るのが好きな子どもたちが、Rokenbok社の動画を自力で探していたことに気づき、bulldozer(ブルドーザー)やcement truck(コンクリートミキサー車)といった、子どもやその家族がYouTubeで検索しそうな言葉を、動画やキャンペーンに盛り込みました。
そうして、関心のある視聴者を絞り込む重要性を認識。少額なコストでターゲティングが簡単にできる広告システムである、YouTubeのTrueViewインサーチ広告やインディスプレイ広告の使用を開始し、その後TrueViewのインストリーム広告へと展開するという、動画マーケティングに本格的に取り組み始めたのです。
同社の幼児向けのROKblockセットは50ドルですが、組立てセットとなると最低100ドルはかかります。Eichen氏は以下のように語っています。
「Rokenbokを初めて知った人が、商品を買ってくれるとは思っていません。YouTubeでの最終目標は、子どもや家族に動画を見てもらうことなのです。
Rokenbokは衝動買いするような商品ではありません。買ってもらう前に、その家族との関係を築かなければならないのです」
完全なるオンライン販売事業へと変貌
最初は効果が目に見えなかった動画戦略も「ターゲティングと関係性の構築の重要性」に気づいたその結果、今やRokenbokを認知している人の50%は、YouTubeの動画で初めてブランドの存在を知り、自社サイトに訪問していることがわかりました。
潜在的なユーザーを新規獲得することに成功し、YouTubeがブランドの認知チャネルとなることを証明したのです。
さらに、動画でしか表現することのできないおもちゃの世界観を伝えることで、ユーザーとの関係性の構築にも成功、現在の販売経路はオンラインのみとなりました。
Rokenbok社は、YouTubeマーケティングを駆使することによって、従来型の玩具専門店が唯一の販売経路であったおもちゃメーカーから、完全なるeコマース事業へと変貌を遂げたのです。
[元記事]
50% of Rokenbok’s customers are generated from YouTube
[参考]
Mr. Rokenbok’s channel
www.youtube.com/rokenbok
Rokenbok
www.Rokenbok.com
Rokenbok Toys Case Study
http://www.youtube.com/watch?v=8LKVXwU_jlU