ひとまず、日本版「オンライン動画広告」業界マップがいかなるものであるのか見てみましょう。
企業から消費者への流れを一目で
マップの向かって左側が「marketers(市場での売買者、市場調査によって商品開発や販売促進を行う企業。以下、企業)」、右側が「subcribers(商品の購入者やサービス加入者。以下、消費者)」になっています。そして、企業と消費者を結ぶ「業界」がグループごとに企業寄りか消費者に近い位置で配置されているようです。
具体的には、左側の広告代理店やリサーチ企業から、アプリケーション開発やストリームデータのネットワークベンダーを通して、右側のネットメディアへとコンテンツが運ばれ、消費者がアクセスできるようになるといった流れとなっています。
そもそも「マーケティング」とは、「より良い商品を適正な価格で、最適な販売チャネルを通じて、消費者に提供するための活動のすべて」といえます。つまり、“消費者にとってより良い商品、消費者にとって適正な価格、消費者にとって最適な販売チャネル”をどう提供するか、その仕組みを考えるというわけです。
そのため「マーケティング」の成功を目指すには、消費者の意識や行動といった消費者心理を知らなければなりませんし、消費者に商品を知ってもらわなければなりません。「消費者を知る」つまり「リサーチ」は、消費者の生活パターンやニーズを知ることです。そして、「商品を知らせる」つまり「コミュニケーション」は、企業が提供する商品やサービスが、消費者の暮らしにどのように役に立つのかということを消費者にわかりやすく伝えることです。
一方で、「マーケティング」とは、市場の中での競争優位なポジションを確保するための戦略的発想法であり、その方法論であるとの意見もあります。市場には必ず競争者(ライバル)が存在します。そして、「競争者」に勝たなければ、自社の商品は売れませんし、結果として企業は収益を確保することはできません。「マーケティング」は、ライバルとの競争において、自社がより優位に立つための戦略づくりでもあるといえるでしょう。
今回の業界マップでは、市場内での役割のようなくくりでグループ分けがなされています。ひとつのグループ内に、ベンダー企業が多いほど競争が激しいともいえます。また、グループごとの「性格」などを調査することで、「ニッチ(すき間)」を狙ったアプローチをとることも可能です。
マーケティングを実施する上で、競争相手や市場の勢力図、そして商品やサービスが提供する側から提供される側に流れてゆく様子を、おおまかにでも理解するには、今回作成された「業界マップ」が、かなり役に立つのではないでしょうか。
米国と日本の市場規模比較
では、実際の市場規模はどのようになっているのでしょうか?米国と日本を比較してみます。
まずは、米国からです。
・米国ネット広告市場の全体の売上は、310億ドル(約2兆4,800億円)。[米IAB]
→うち動画広告は、18億ドル(約1,440億円)の売上げで、6%のシェアに成長。
・動画広告のシェアは、2012年の7.9%から2016年には15%、成長率にすると5年間で18.9%の成長が予測されている。[米eMarketer]
・2013年のグローバル広告市場予測、デジタルメディアの収益は13.5%増の見込み。
→うちオンライン動画・モバイルおよび有料検索は14%増成長するとの見通し
・さらには、2017年までに、市場シェアが20%を超えるとの予測。[米マグナグローバル]
では、日本国内はどうでしょう。
マイクロアドが、2012年8月に試算した「2012年から2016年までのRTB経由ディスプレイ広告市場規模」では、2011年に66億円まで拡大した市場規模は、2012年は、前年対比4倍の256億円まで伸長すると見込まれています。2013年以降も、RTB経由のディスプレイ広告配信面の拡大や海外事業者の国内参入などが進むことも予想され、2016年にはディスプレイ広告の25.7%がRTB経由で配信、市場規模は1,000億円を突破することが予測されています。
また、電通が毎年発表している「日本の広告費」によると、2011年の総広告費は、5兆7,096億円となりました。媒体別にみると、「テレビ・新聞・雑誌・ラジオ」などの広告費のいずれも減少する一方、「衛星メディア関連広告費(同113.6%)」や「インターネット広告費(同104.1%)」は、増加しています。
特に、「インターネット広告費」は、規模としては、8,062億円、前述した国内総広告費の14.1%にまで成長しています。内訳は、「PCディスプレイ広告(2,827億円)」、「PC検索連動広告(2,194億円)」、「スマートフォンを除くモバイル広告(831億円)」、「スマートフォン広告単独(337億円)」となっています。