写真が動いているような不思議さから、思わず見入ってしまう映像技法「シネマグラフ」。人々を引き込む力があるとして昨年から注目され始め、SNSやバナー広告などで目にする機会が増えてきました。
今回は、シネマグラフの特徴や仕組み、効果的な活用シーンをいくつかの事例を取り上げながら紹介していきます。

「シネマグラフ」はアメリカの写真家Kevin Burg氏 とJamie Beck氏によって編み出されました。もともとはGIFアニメーションによる表現技法を指していましたが、「シネマグラフ」という言葉が普及したことに伴い、最近ではGIFアニメーションに限らず、静止画と動画を組み合わせた作品全般が「シネマグラフ」と呼ばれるようになっています。
以下の事例のような、背景全体に動きがついている作品や、静止画とCGを組み合わせた作品もシネマグラフの1つです。
▼DIESEL(アパレル):ファッション雑誌の写真が動いているような新しい表現
▼ペリエ:水滴のわずかな動きをつい目で追ってしまう
▼ピザハット:背景に動きをつけることで人物が際立っている。米テレビCMでも使われた
▼コカコーラ:静止画とCGの組み合わせ。Facebook動画広告として配信された
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Posted by コカ・コーラ (Coca-Cola) on 2015年12月21日
シネマグラフの仕組み
シネマグラフはGIFフォーマットであれば、Photoshop やシネマグラフ専用の作成ツールを使って手軽に制作することができます。基本的な仕組みは以下の通りです。
- 用意した動画内から静止フレームを1コマ選択する
- 選択した静止画の中で動きを付けたいところに穴をあける
- 動画の上に穴のあいた静止フレームを重ね、穴の部分だけ画像が切り替わるようにする
▼シネマグラフ作成ツール「Cinemagraph Pro」
シネマグラフの活用シーン
思わず目を留めてしまう不思議なシネマグラフは、SNS上でスクロールしながら情報を取得しているユーザーへのアイキャッチ効果を期待できます。
AdWeekによれば、Facebook、Instagramともにシネマグラフの広告活用を推奨しており、Facebookのビジネス活用に精通する業界関係者は「今後、Facebookでシネマグラフを目にする機会が増えるだろう」と予想しています。
また、SNSだけでなく、バナー広告やメールマーケティングのような、まずは目を引き、そこからサイト流入などにつなげたい場面でも効果的です。
実際に、シネマグラフを使ったキャンペーンでは広告想起率やCTRが向上したというデータもあり、その効果が実証されています。
ここからは、ソーシャルメディア、バナー広告、メールマーケティングの3つの活用シーンについて事例とともに解説していきます。
1. ソーシャルメディア
オーストラリアの老舗自動車メーカーHoldenは、自動車メーカーの中で最初にInstagram動画広告にシネマグラフを活用した企業です。同社は新型車のローンチに際し、女性にもブランドに興味を持ってもらいたいと考え、ファッション系のインフルエンサーをモデルに起用したシネマグラフを広告配信。その結果、広告想起率は30ポイントも上昇し、ブランド認知度と好感度においても効果が見られました。
シネマグラフはソーシャルメディアのフィード上でアイキャッチ効果を期待できるだけでなく、Instagramのようなハイセンスなクリエイティブが求められるSNSでも好まれやすい技法です。ループ再生でも違和感なく表現できる点も、Instagramとの相性の良さと言えるでしょう。
2. バナー広告
シネマグラフ作成ツールを提供するFlixel Photos Inc.が行ったA/Bテストでは、シネマグラフを使ったバナー広告のクリック数は静止画バナー広告の5.6倍を記録しています。
▼静止画バナー広告のCTRが0.14%だったのに対し、シネマグラフのバナー広告は0.80%に
また別の事例として、同社のMark Homza氏はTHE WALL STREET JOURNALに対し、パナソニックのカメラ「Lumix」のバナー広告ではクリック数が静止画と比較して最大60%も向上したことも明らかにしています。
3. メールマーケティング
目を引きやすいシネマグラフは動画メールにも活用したい手法です。メール内に動画を置くことで、サイト流入率の上昇につながり、結果的にCVRが向上した事例は以前ご紹介した通りです(参考)。ただし動画フォーマットの埋め込みはメール受信者の環境によっては視聴できないケースもあります。その点、GIFアニメーションであれば汎用性が高まり、埋め込みも比較的手軽なため、取り組みやすい方法と言えます。
▼動画配信サービスのNetflixはシネマグラフをメールに埋め込み新番組の予告編に誘導した
配信フォーマットの選定
冒頭でも述べたように、シネマグラフにはGIFアニメーションと動画の2つのフォーマットがあります。
そのうちGIFアニメーションはメールに埋め込む場合や、バナー広告で活用する場合に適しています。
Facebookも昨年5月からGIFアニメーションに対応しており、GIFアニメーションを含む投稿を広告として出稿することができます(※自動再生設定は動画広告に準じる)。しかし、機器によっては再生されない場合があるため、フィードでの自動再生が保証されているのは動画フォーマットでの投稿です(参考)。
Instagramは現時点でGIFアニメーションの投稿ができず、シネマグラフを使う際は動画フォーマットでの投稿が必要となります(※サードパーティーのアプリからは投稿可)。
Twitter に関しては、2014年、他のSNSに先駆けてGIFアニメーションに対応しており、先日からモバイルアプリ向けにGIFの投稿ボタンの搭載を試験的に開始するなど、GIFアニメーションの活用に積極的です(参考)。
このように、配信場所によって最適なフォーマットが異なるため、シネマグラフを活用する際は、配信場所に合わせて作成しましょう。
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シネマグラフは、さまざまなコンテンツが流れるSNSでのマーケティングやバナー広告、メールマーケティングなどにおいて高いアイキャッチ効果を期待できる技法です。ストーリーの展開が不要なため、いままで静止画を使って広告を配信していた企業でも取り入れやすい動画と言えます。
今後も多くの企業によるユニークなシネマグラフが制作されていくことが期待されます。
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