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ケーススタディ 2016年02月03日

多くの赤ちゃんの命を救った一大動画キャンペーン成功事例――視聴者の「行動」を促すために行われた工夫とは

メッセージの訴求力や拡散力に長ける動画ですが、動画を通して価値ある情報を提供することで数々の赤ちゃんの命を救った啓発動画キャンペーン事例をご紹介しましょう。

動画企画の背景や、情報拡散のための取り組みを1つずつ紐解くことで、動画マーケティング施策の成功のヒントが見えてきます。

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今回ご紹介するのは、ロンドンを拠点に各国で活動している国際救急救命ボランティア組織のSt John Ambulance(セント ジョン アンビュランス、以下SJA)が2015年に展開した「The Chokeables(喉を詰まらせるものたち)」という名の動画キャンペーンです。

この少々ショッキングな名前のキャンペーンをSJAが実施した背景から、実際の成果までを見てみましょう。

親たちのニーズに応えるHowTo動画

SJAが行った独自調査では、自分の赤ちゃんが誤飲により喉を詰まらせているのを目の当たりにした人は40%以上いたのに対し、その対処法を知っていた人は21%しかいないことが明らかとなりました。

またSJAがFacebookでモニターした際にも同様の傾向が見られていました。キャンペーン以前に同社のFacebook投稿でもっともシェアされたのは、赤ちゃんが喉を詰まらせている時の対処法を解説したインフォグラフィックだったのです。

そこで、誤飲時の対処方法を人々に覚えてもらうための本キャンペーンが計画されました。

シェアされ、「行動」を起こしてもらうための動画企画

実はSJAでは2013年に応急処置の重要性を訴求する動画を公開していました。シリアスなトーンで展開される本動画を通して、応急処置が大切であることを人々に認識させることまではできましたが、その後の調査で、わずか10%の人しか応急処置の方法を具体的に学ぶという行動を起こしていないことが明らかになりました。

この経験から、ただ危機感を煽るのでなく、動画を通してできるだけ簡単かつ具体的に応急処置の方法を伝えることが必要だと考えたSJAは、英クリエイティブエイジェンシー、 Bartle Bogle Hegarty社と組み、赤ちゃんが拾いやすく、喉を詰まらせる可能性の高い小物たちを主役に置いて、応急処置テクニックを教えるアイデアを企画しました。

選ばれた小物は、ペンのキャップ、ピーナッツ、クレヨン、ビー玉、小さな人形、赤ちゃんの形をしたグミ。これらをキャラクター化し、「The Chokeables(喉を詰まらせるものたち)」というグループ名を付けました。あまり気持ちの良い名称ではありませんが、連想性が高く、ウェブでも検索しやすいワードであることは確かです。

そして、David Mitchell、Johnny Vegas、David Walliams、John Hurtといったコメディアンや俳優たちが小物キャラクターの声優として参加し、楽しくユーモラスな世界観の中で、対処方法を分かりやすく伝えています。

▽動画の冒頭で「ご注目ください!僕たちはもう赤ちゃんの喉に詰まるのはイヤなんです」と呼びかけ、最後は「他の人にもこの動画をシェアしてください」というメッセージで終わります

リーチを拡大させるためのPR施策

SJAのような非営利団体によるキャンペーンは得てして十分な広報予算を用意できません。そこで、キャンペーン効果を最大化させるために、動画コンテンツを軸としたPR活動も積極的に行われました。

SJAはジャーナリスト向けの説明会を開き、読者層のタイプに合わせて、調査データをベースとした切り口の異なるプレスリリースを配信。加えて、このキャンペーンによって実際に赤ちゃんの命が救われた”サクセスストーリー”を活かし、一過性の話題ではなく長期的なメディア露出を実現する工夫を行いました。

▽“John HurtやDavid Walliamsが、喉を詰まらせている赤ちゃんの救助方法を教える動画で声を担当”

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▽“「The Chokeables」。スター勢ぞろいのSt John Amublanceの動画が、喉を詰まらせている赤ちゃんを救うための情報を提供”

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▽“St John Ambulanceの広告「The Chokeables」が36人の子どもの命を救った”

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また、パパママブロガーのイベントやソーシャルメディアのコンテストを開催したり、英国の育児情報サイト「Mumsnet」などとパートナーシップを組んだりもしています。 

SJAは上記に加え、動画本編と連動した「The Pen that Lost its Lid(キャップをなくしたペン)」というタイトルの無料電子書籍を同時期に公開。国会議員とも積極的に関わりを持ち、さらには昔ながらの戸別訪問やダイレクトメールによるキャンペーンも行い、リーチの最大化を図りました。

PPC(Pay-per-click)広告やEメールマーケティングも併用した本キャンペーンは、1本の価値ある動画を軸として、まさにマルチチャネル・キャンペーンと呼ぶにふさわしい多面的な展開が行われたのです。

予想を大幅に超える成果で子どもを危機から救う

SJAは企画段階で自らが”成功”と考える明確な目標を設定していましたが、実際はどのような結果を残したのでしょうか?

実施前に設定された目標

  • テレビ放映で2900万人にリーチ
  • オンラインで180万回再生
  • メディア露出100件
  • 応急処置テクニックに関する人々の知識を5%向上させる
  • SJAの応急処置を解説する動画の再生回数3,000回を達成し、応急処置のさらなる習得を促す

実際の成果

  • テレビで3200万人にリーチ(最初の1週間で2090万人視聴と推定)
  • オンラインでの動画再生回数800万回(YouTube、Facebook、Twitterなど)
  • メディア露出547件、ブロガーによる投稿19回
  • 応急処置テクニックに関する人々の知識が24%向上
  • SJAの応急処置に関する動画の再生回数300,000回を達成

このように、設定したすべての目標を大きく上回る結果を残し、本キャンペーンは大成功のうちに終わりました。

Facebookは動画マーケティングの成功ケーススタディとして本事例を取リ上げ、英国の育児情報サイト「Netmums」はサイト史上最高のシェアを獲得した記事になったとコメント。さらにキャペーン期間中、「baby chocking(赤ちゃん/喉が詰まる)」のGoogleでの検索ボリュームが過去最高を記録したそうです。

費用対効果の面でも、動画の視聴1回当たりのコストが0.01ポンド(約1.7円)以下という素晴らしい結果を残しています。

しかし、何よりも重要な成果として特筆すべきは、母親たちが本動画から得た知識を用いて、実際に自分の赤ちゃんの命を救ったことです。
SJAによると、キャンドルやコイン、ぶどうなど、さまざまなものを誤飲してしまったものの、動画を見ていたおかげで子どもを救うことができたというエピソードが40件以上も寄せられたそうです。

成功へと導いた動画マーケティングの「基本」

2015年のMasters of Marketing awardの動画部門賞を受賞している本キャンペーン。最後に改めて成功の要因を整理してみましょう。

  1. 調査データやFacebookでのシェアの多さから、ターゲット層である親たちが誤飲時の対処法を知りたがっているというリアルなニーズを的確に捉えている。
  2. 過去の(失敗)経験を生かし、実際の行動に役立つ実用性の高い情報を提供している。情報価値が高いからこそ広く拡散された。
  3. ユーモアも加えながら、対処法が決して難しいことではないというイメージを残し、いざ直面した時でも親たちが行動を起こしやすい空気を作り出している。
  4. 40秒という短尺にまとめている。YouTubeでの平均視聴時間はなんと39秒を記録しており、完全視聴されることで有益な情報をきちんと人々に届けることができた。
  5. タイミングや文脈を十分に計り、PRを含めたさまざまなコミュニケーション施策を重ねることで広報効果を最大化した。

このように振り返ると、ターゲットインサイトの理解や短尺動画など、動画マーケティングの基本が多く含まれていたことが分かります。
ただ闇雲に"バズ"を狙うのではなく、このような基本を忠実に実行することが、動画マーケティング施策成功への近道なのかもしれません。

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